笑顔が素敵な彼

仕事の後、女は無性に泣きたくなる。 そんなことを考えながらいつもの坂を登っていた。 私の働いているオフィスから最寄りの駅に向うには、ラブホテルが立ち並ぶこの急な斜面を登らなければならない。 私はため息をついた。 「疲れた…」意図せずともその言葉…

右脳に刻まれた君の目

季節は春といってもまだまだ、夕暮れは時は寒かった。 僕は公園で一人煙草に火をつけ今日のデートを思い出す。 今日は大阪の有名な水族館に行った。大きな魚。色鮮やかに群れをなす魚。あまり動かないで砂の上に寝ている魚。 それらを眺める君。 僕は魚を眺…

切れなかったツメ

僕と君は喫茶店に入る。「喫茶店」と「カフェ」の違いってなんだろう。君と僕はそんな話をしている。 この喫茶店はコーヒーが美味しい。君がそんな話をしている。僕は好きな人と好きなものを食べたり、飲んだりする時間が大好きだ。 君はサンドイッチを食べ…

お昼まで寝ていた君

「今日こそ起きるって言ったじゃん」 僕は怒った口調で、しかし、笑いながら君に言う。君は、まだ寝ぼけているようだ。「んーごめん。またやっちゃったかー。」君はボサボサの髪を触りながらお風呂に向かう。僕はも時間を持て余している。「しょうがないから…

嫌いの先端は丸みを帯びて

僕と君は喧嘩している。 別に珍しいことじゃない。むしろもう慣れっこだ。「もう嫌い」君は惜しむことなくその言葉を僕に投げつける。「僕も嫌い」僕も負けじと言葉を投げ返す。喧嘩はそう簡単には終わらないものだ。どうやら翌日に持ち越しらしい。やれやれ…

待ち合わせ

雨が降っていた。 もう少ししたら君が来る。いつものように君が来る。心にぐるぐると包帯を巻いて、少しだけ悲しい顔をして君が来る。 集合の14時になった。君はいつものように笑顔で来る。目は笑ってないが、とても可愛い笑顔だ。 君は傘をさす。僕は傘を電…

感情は波のように

.. また波が来た。今度はとても大きな波だ。10メートル前後だ。僕の身長の6倍から7倍というところだろうか。その波はいつものように、僕を大きな海へとさらっていった。 「かわいそうに。」 誰かの声が聞こえる。..僕は全く抵抗していなかった。波からの…