待ち合わせ

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雨が降っていた。

もう少ししたら君が来る。
いつものように君が来る。
心にぐるぐると包帯を巻いて、少しだけ悲しい顔をして君が来る。

 

集合の14時になった。
君はいつものように笑顔で来る。目は笑ってないが、とても可愛い笑顔だ。

 

君は傘をさす。
僕は傘を電車に忘れた。
君は少しの迷いもなく僕を傘の中に入れてくれる。
君は半分濡れていたが、とても笑顔だ。
とても、かわいい。

 

途中で雨が止む。
君は「残念だったねえ」と悪戯っぽい顔で僕に笑いかける。
君の言葉に意図を感じないようにしている僕は「そうだね」と答える。

 

ふっと桜が落ちてきた。
いつの間にか公園にまできていたのか。
僕はふっと言葉を漏らす。「お花見したいな」君は僕の手を握って答える。「お花見しようよ。今年も、来年も、再来年も。ずーっと、2人で。」
僕は笑った。素直なものの言い方をする人はどこに行っても好かれるものだ。

 

 

その翌日、君は電車に飛び込んだ。

 

 

人間は時々僕の理解を超えた行動をそつなく取るものだ。

 

僕は君の言葉に意図を汲み取らないことだけは長けていた。
しかし、君の言葉全てを驚くほど鮮明に覚えていた。記憶力だけはいいのだろうか。
それとも、君の言葉に意味を与えることをただ恐れていたのか。

 

もう2度と届かない君へ。
僕の何の意図もしてない言葉を空にいる君に送ります。

 

今日も、桜が散っていた。 

 

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