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嫌いの先端は丸みを帯びて

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僕と君は喧嘩している。 


別に珍しいことじゃない。むしろもう慣れっこだ。「もう嫌い」君は惜しむことなくその言葉を僕に投げつける。「僕も嫌い」僕も負けじと言葉を投げ返す。喧嘩はそう簡単には終わらないものだ。どうやら翌日に持ち越しらしい。やれやれ。


僕らは同じ布団に入る。もちろん背中を向けながら。「どうして背中を向けるの?」君は尋ねる。答える価値もない質問だ。僕は返事をしない。彼女は足で蹴ってくる。「嫌い!」彼女はまたその言葉を僕に投げた。「僕も」とだけ返事をした。


僕は夢を見ていた。君の夢だ。君はナイフを持っている。そして誰かを惜しむことなく刺している。君自身だった。「やめろよ」僕は言った。君は泣いていた。「なぜこんなことをする?」夢だとわかっていても僕は君が心配になった。ナイフの先端は真っ赤に染まっている。「嫌われたから」君は答える。「あれは売り言葉に買い言葉というか…。僕が意図していない言葉だ。悪かった。君のことは嫌いなんかじゃない」「違うの」君は答えた。「私によ。私に嫌われたの。」君は激しく泣いた。ずっと、ずっと、ずっと泣いていた。


僕は自分を呪った。僕は君に何ができるだろう。「嫌いだ」僕は僕自身にそう言った。すると、ナイフが目の前に現れた。僕はそれを拾う。迷うことなく僕はそのナイフで自分の腹をさす。しかし、おかしい。痛みは無い。ナイフの先端を見ると、鋭利を全く帯びていないのだ。


誰かが来る。泣いている彼女と、呆然としている僕の前に。誰かはいう。「結局さ、自分が可愛いんだよ。みんなさ。」そういったのは、向こうから来た僕だった。

 

目がさめる。夜中の3時だ。彼女は横で泣いていた。僕は救えねえバカだ。


「ごめん。僕は嘘をついた。」

彼女に言った。「君が僕のことをいくら嫌っても、僕には君しかいない」
そう言うと震えて今にも壊れそうな彼女をぎゅっと抱きしめた。

彼女は、まだ、泣き止まない。

 

 

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